『花咲ける青少年 特別編』が素晴らしすぎる。






花咲ける青少年 特別編 1 (花とゆめCOMICSスペシャル)

花咲ける青少年 特別編 1 (花とゆめCOMICSスペシャル)

 今週号の『チャンピオン』では刃牙対勇次郎の最終決戦が始まっているわけですが、なぜか(?)全く興味が沸かないので、樹なつみ花咲ける青少年 特別編』の話でもしましょう。いやあ、おもしろいですね!

 このウェブログでもたびたび話題に出していますが、これは素晴らしい続編です。昨今の続編ブームで昔のヒット作の半分くらいには何かしらの続編が作られた印象だけれど、個人的にはそのなかでもベストに挙げたいくらい。

 樹さんは絵柄を意識的に当時のものに戻してこの『特別編』を書いているそうで、どこからどこまで紛れもない『花咲ける青少年』の世界。いやあ、素晴らしいなあ。ほんとに素晴らしいなあ。やっぱり絶頂期を過ぎた作家が昔の作品に頼ったようなケースとは出来が違うな、と感心しきりです。

 物語ももちろんおもしろいのですが、何がそんなに素晴らしいのかといえば、結局、各登場人物の印象が本編と変わっていないということに尽きますね。

 この手の続編を読むということは、いわば長い歳月をはさんで初恋のひとと再会するようなもの。かっこ良かったあの人がダサいおじさんになっていたりしたらがっかりしてしまいます。その点、この作品では! 十数年ぶりに再開したあのひともこのひとも、まるで当時のままなのです。

 特筆するべきは樹キャラ最高の美青年ユージィンのため息の出るような美しさでしょう。それはもう、少女漫画はこうでなくっちゃ!といいたくなるような美麗さ。こればかりは少年漫画ではちょっと味わえない種類の美しさなので、たまらないですね。

 単行本第一巻ではユージィンの話とカールの話が収録されているのですが、今月号の『メロディ』にはラギネイ王国の第二王子ルマティの話が掲載されています。本編ではそのカリスマ性を兄王子に疎まれ、アメリカに追いやられ、その後ラギネイを救うために帰還することになる運命の王子であるわけですが、物語は少年時代のルマティを追いかけていきます。

 この物語のなかでは、やがてルマティの腕のなかで死んでいくこととになる侍従のクインザもまだ若く、しかも壮健で、のちの展開を知っている者としてはなかなか泣けるものがあります。たぶんこのあと立人(リーレン)と花鹿の話が待っているはずなので、それも楽しみです。

 まあ、いってしまえばある種の二次創作、本編の物語の結末を変えることはない程度の「お遊び」ではありますが、しかし、そんじょそこらの二次創作とはクオリティが違う! 「お遊び」を「お遊び」に終わらせず、キャラ萌えしながらもしっかりと物語を描き込む、この志の高さよ。

 この道うん十年の少女漫画家樹なつみの凄みを思い知らされる傑作です。本編を既読の方で読んでいないひとはぜひお読みくださいませ。第一巻絶賛発売中でございます。