[]たたかえ! 愛の戦士虚淵玄。
『魔法少女まどか☆マギカ』を第10話まで見ました。うーん、なるほど、これはおもしろい。既に各地でうわさになっているのでいまさら感想を書くこともはばかられるのだけれど、まあ、遅れて視聴している者の意見もそれはそれで価値があると思うので、書いてみますね。
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この作品のシナリオを書いているのが虚淵玄であることはよく知られています。虚淵さんはいままでエロゲのシナリオや小説を書いてきたひとで、代表作は『Phantom of Infelno』、『沙耶の唄』そして『Fate/Zero』あたりでしょう。
あるいはこの『まどか☆マギカ』が新たな代表作として知られることになるかもしれません。ぼくは虚淵さんの作品はだいたい読んでいるんだけれど、この作品は、いままでの虚淵作品に比べて非常に洗練された印象を受けます。
とにかく展開に無駄がない。1クールの話数のなかで、すべてが必然として成立している。こういう行動を取ったためにこういう展開になり、その展開がまた次の展開を生むという、その「必然の連環」が実にスマートに成り立っている。その無駄のなさは、ある種、美しいとすらいえます。
連鎖する悲劇はちょっと『コードギアス』っぽいんだけれど、サプライズを重視したためにわりとめちゃくちゃな展開が続いた『コードギアス』に比べると、とにかく話がまとまっている。「よくできた『コードギアス』」と呼びたいところ。
でも逆にすべてが必然として成立しているが故に、「だから何?」と思ってしまうことも事実。たしかに「必然」は「納得」をもたらし、「納得」は「快感」ではあるんだけれど、同時にまさにそれが「必然」であるが故に「むなしさ」を感じずにはいられない。
なんとなく既視感があるなあ、と思ったんだけれど、清水玲子の漫画に似ていると思う。このアニメが好きなひとは『月の子』や『秘密』も好きなんじゃないかな。
精緻な絶望のロジックで組み上げられた美しい、しかしむなしい物語。ただ、清水玲子の作品、たとえば『月の子』では、最後の最後にそれまで積み上げたすべてのロジックを無視して、「奇跡」が起こります。
しかし、あくまでもリアリズムを貫き通そうとするならばそうそう「奇跡」を起こすわけにはいかない。ということは、この物語に出口はないし、だったらべつに見たくもないかなあ――と思っていたんだけれど、第8話あたりで気づいた。
ああ、これ、シリアスな漆黒の絶望の物語のように見えて、思い切りメロドラマ、それも百合メロドラマなんじゃん(笑)。な、なるほど、これは萌えるなあ。めちゃくちゃ萌える。いままでの百合萌えのなかでいちばんかもしれない。ていうかいちばん。いちばんすぎる。
そもそも虚淵玄はそのドラマツルギーにおいて「愛」を重視し、「愛の戦士」を名乗っていた作家です。しかし、その作風は作品を重ねるごとにリアリズムに傾倒していき、『白貌の伝道師』で遂に「愛が敗北する」物語に到達します。
そこに見出されたものは、何の偽りも欺瞞もない、白々とした「現実」でした。そうしてあとはひょうびょうとひろがる虚無の荒野がのこるのみ。と思っていたんだけれど、そこに百合という仄かな希望がのこされていたんですね。びっくりだよ。
そういうわけで、百合として見るとたしかにめちゃくちゃ萌えるのですが、一本の物語として見ると、これは、どうなんだろうなあ。まあとにかく期待しているので、最後の最後に予想を上回る超展開を見せてもらいたいものです。いつか訪れるかもしれない勝利の日を目指し、たたかえ、愛の戦士虚淵玄!
ちなみにカップリングは杏子×さやかで。激萌え。