[]願望充足の教科書――『巨乳ファンタジー』。




 注――今回の記事はかなり18禁で男性向けな内容となっております。


 俳句の世界に、「二物衝撃」という考え方がある。色々とむずかしい議論があるらしいのでくわしく語ることはしないが(できないが)、ようするにふたつの異なる要素を持つ言葉がぶつかりあって、衝撃をもたらすということだと理解している。

 さて、『巨乳ファンタジー』の話。巨乳ファンタジー。巨乳。ファンタジー。一見、全く関係がないふたつの概念がひとつの文字列のなかで衝突しあい、なんともいえない衝撃をもたらす、素晴らしいタイトルである。昔、『巨乳ハンター』という漫画があったが、それに匹敵するかあるいは上回るインパクトだろう。たぶん。

 で、内容はどうなのかというと、まさにこのタイトルのとおり。巨乳の美女、美少女たちが大量に出てくるファンタジー、としかいいようがない。

 物語の舞台となるのは権謀術数渦巻くとある王国。国王と貴族たちが対立し、それに絶滅したはずの魔族たちが絡む、一見平和ではあるがその実、様々な危険に満ちた国である。

 この国で騎士学校を卒業した主人公リュートだったが、順位は最下位で、まわりからは軽蔑されるわ罵倒されるわ。しかし、生まれつきひょうひょうとしてものに拘らないかれは、そんな状況でも自然体のまま。そうして、なんとそこからリュートの立身出世物語が始まるのだった――とまあ、そういう話。

 こういってはなんだが、この話、意外と背景設定がよくできている。国王が親衛隊を作って貴族たちと対立しているというちょっと『三銃士』っぽい設定に、入ったものが帰ってこないなぞの森だの、陰謀を練る騎士や貴族たちなどが絡み、主人公はいったい何者なのか、という謎を絡めて、なかなか読ませる。

 もちろん、『Fate』とかああいう破格の作品と比べられるものではないのだが、『巨乳ファンタジー』とかいうアレなタイトルにしては、意外におもしろいですよ。

 主人公がどんどん出世の階段を登っていくさまは、なんだかんだいってやっぱり気持ちいい。ほとんど司馬遼太郎国盗り物語』の世界である。もっとも主人公は斎藤道三のような野心家ではなく、素直でのびやかで柔らかな性格の持ち主。巨乳の女の子とエッチできればそれでしあわせ、というくらいの野心しか持っていない。

 その主人公がトントン拍子で成功し、ヒロインたちに助けられながらも、色々な策略を練る野心家たちの裏をかいていくあたりはおもしろい。その楽しいご都合主義は、ある意味、エロゲの王道かもしれない。この道を極めていくと金庸の『鹿鼎記』ができあがるのだろうなあ、と思う。

 まあ、タイトルの時点ではだれがどう考えても頭の悪い抜きゲとしか思えないし、じっさいかぎりなくバカなのだが(笑)、意外にもシナリオはよくできているのだ。たしかに珠玉の名作とか鏤骨の名文といえるものでは全然ないんだけれど、願望充足ファンタジーとしては教科書的といえるのではないかと。

 しかし、もちろん、この作品の価値はそういうところだけにではなく、エロスの描写にこそある。シナリオライターがこだわり抜いたと思われる乳フェチ描写はエロい。それはもう、偏執的なまでにエロい。

 そもそもこの作品、出てくるヒロイン全員巨乳、それもJカップとかKカップとかいうわけのわからない乳の持ち主ばかりである。そう、ファンタジーではあるのだが、この世界にはちゃんとブラジャーがあり(笑)、ヒロインたちが登場するとなぜかその他のプロフィールとともにおっぱいのサイズが表示されるのだ。

 初めから主人公に好感を抱いているヒロインばかりではないが、そこはエロゲのお約束、あのツンデレ少女もこのクーデレ美女も、何だかんだでリュートに篭絡されることになる。

 エロシーンは各ヒロインごとにそうとうの量が用意されており、母乳あり、触手あり。特にパイズリへのこだわりは凄まじい。たぶん、ヒロイン全員パイズリがあるんじゃないかな。どのような結末を迎えるかはどのヒロインの結末を見るかしだいである。

 巨乳好きなひとには文句なしにオススメ、巨乳好きで母乳好きのひとは絶対に買い、それ以外のひとにはまあまあオススメという作品である。もう少しボリュームがあったらぼく的に大満足だったんだけれど、まあ、贅沢はいうまい。何かいい抜きゲはないか、と思っておられたら、ぜひどうぞ。