[]冬コミ発売のid:hasidreamの同人小説に戦慄した件。
はしくんの冬コミ用の同人誌のあとがきを書くために先程読了・・・・。
・・・面白かった。ここまで行くと才能かもしれない・・・ちょっとどころじゃなくびっくり。人って化けるなー。。。
そういうわけで、ぼくも冬コミ発売予定のはし禅師(id:hasidream)の小説をひと足早く読ませてもらったのですが、これがなかなかにおもしろい。たしかにいろいろな意味で完璧には程遠い作品ではあるとは思いますが、長所が欠点を上回ること甚だしく、まず傑作目前といっていいかと。
まあ、さすがにただ傑作というには難点が多すぎるんだけれど、少なくともぼくは十分に堪能したし、満足しました。いや、ほんと、今年読んだすべての小説のなかでもかなり上位にランキングするんじゃね?という破格の高評価。
ペトロニウスさんが口を極めて褒めているので、ぼくは世界のバランスのために貶しておかないといけないな、と思っていたんだけれど、これはちょっと、うかうかとは貶せない。
もちろん、文章技巧的には山ほどツッコミどころがあるのですが、そういうところはさっきまでぼくが片っ端から朱をいれていたので(笑)、それほど大きな問題はのこっていないはず。
さっきまでペトロニウスさんと「妬ましいね」「そうですね」「殺っちゃいますか」「埋めちゃいましょう」という危険な会話をしていたのですが、紛れもなく才能を感じる一作となっております。
ただまあ、今回も『マブラヴ』の世界設定を引用した二次創作という位置づけなので、本当に創作能力があるのかどうかはまだわからないとはいえるのですが、そういうことはこの物語を楽しむ読者にとっては関係ないことですからね。冬コミに参加する読者諸氏は買って損なしと断言しておきましょう。
物語は、対エイリアン用の兵器開発競争に挑む某企業で頂点へ上り詰めようとするひとりの女性が、その闘争の切り札として、絶対の天才と破天荒な人格を併せ持つパイロットを召喚するところから始まります。いちいち行動原理の読めないそのパイロットに混乱させられながらも、少しずつ計画は進んでいくのですが――というお話。
まあ、ここらへんは作者自ら断言しているとおりあきらかに漫画『医龍』へのオマージュで、さほど独創性はない。『医龍』の本質をよく理解し消化している点には感心させられますが、決して独自のストーリーテリングとはいえないでしょう。
この作者のオリジナルが見受けられるのは、むしろ人格造詣の妙。有能でしっかり者で野心家の姉とあわて者ながらキュートで誰にでも愛される妹という主人公姉妹と、くだんのパイロットのある種の三角関係を追いかけながら、三者三様の夢と野心と狂気を描き出していくあたりの手際のよさにはちょっとびっくり。
初読の段階では奇妙にも見えた行動が最後にはすべて合理的に処理されていくあたりの巧みな展開にもまたびっくり。前作もまあそれなりに読ませる作品ではあったけれど、この新作はそれをはるかに乗り越えた会心の一作といっていいでしょう。
いやあ、おもしろかった! 二作目にして着実に階段を上りつつあるはし聖者には非常に嫉妬を覚えます。いやいや、ほんと、これはちょっとすごい。登場人物一人ひとりの心理にいたるまできっちり計算された展開にはプロフェッショナルな読者へのサービス精神すら感じられるのだけれど、それ以上に印象深いのはやはり各人が抱える情念でしょう。
はし覚者は基本的にはやはり情念の作家なのだと思う。到達不可能なはずの領域へとひとを強烈に駆動する「夢」と呼ばれるモチベーション! その狂気にも似た情熱を描くとはし超人は才気を感じさせます。
まあ、これでもなお、もうひとつ、ふたつ、もの足りない気はするし、だからこそ傑作にはまだ一歩届かないとも思うのだけれど、まだまだ、進歩の余地はある。いま、注目の書き手です。冬コミではチェックしておいてもいいかと。「Something Orange」の名にかけて、推薦しておきます。
オススメ!